■ルーカス・クラナハ (父)
「ヴィーナス」(Venus)
1532年 板(ブナ)・テンペラ・油彩 37.9cmX24.6cm
フランクフルト・シュテーデル美術館蔵
北方ルネサンスを代表する画家、ルーカス・クラナハのヴィーナスです。
模写はラワンベニヤに油彩で描きましたが、
シュテーデル美術館のサイトを見ると、オリジナルはブナの板の上にテンペラと油彩で描かれているようです。
黒い背景からくっきりと浮かび上がった裸体像は、ある意味モダンでとてもクールな現代的な感覚の絵です。
同時代の多くの裸体画がふくよかでボリュームのある肉体を見せている中、クラナハのものは手足が長く小さめの乳房やお尻、腰のくびれもほとんど無くお腹が突き出た感じの、いわゆるゴシック的裸体のフォルムで、中世末期の裸体美に近いものです。
表情も独特で、やはりどこか中世的な細っそりした目や装飾品の効果がエロティックな雰囲気を醸し出しています。
しかしそこで終わっていないのがクラナハの偉大なところで、上品でとても洗練されたヌードにまで高めているのは素晴らしいです。
クラナハの絵を愛好していた作家の澁澤龍彦も、その絵を何冊かの著作の中で取り上げています。
>>>フランクフルト・シュテーデル美術館
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