■■color eyes view■■

monologue

アルフレッド・シスレー(1839-1899)


ここ数年、妙にアルフレッド・シスレーに惹かれる。その絵画はもちろん、画家の精神状態や生き方まで気になる。

そんな折、タイミング良くとでもいうか 作品社というところから「シスレー―イール=ド=フランスの抒情詩人」という翻訳本が出た。フランスの美術評論家レイモン・コニアの名著。日本ではシスレー単独で書かれた著作は無く、せいぜい展覧会の図録や画集の解説くらいであった。

アルフレッド・シスレーは、終生一貫してそのスタイルをほとんど変えずに印象派の画家らしく光に照らされた儚い風景をひたすら追っていた。
生前はまったく評価を得られずに、パリ近郊の田舎町で貧窮と失意のなかで亡くなった。
2人の遺児のために開かれた競売で大成功を収めたのはわずか1年後だった。

>>>「シスレー―イール=ド=フランスの抒情詩人」

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先日、松井智恵さんという声楽家とLA萌MIというコーラスグループのコンサートに行ってきました。

コンサートの内容は聖歌や日本の子守唄などが主なプログラムでした。会場が新潟市内の花園カトリック教会というところで、座席が5〜60人くらいでしょうか、大きなホールとは全く違うため、声に包まれたような響きの中でとても心地良かったです。

思えば、坂本龍一+ダンスリー「The End of Asia」というコラボアルバムを初めて聴いたのが中学生の頃だったと思いますが、ダンスリーに所属している智恵さんの声をそこで初めて聴きました。しばらくして89年の同じくダンスリーの「よき人に逢っての帰り」というCDで智恵さんの声にすっかり魅了されてしまいました。

長年ファンだった人の声を間近で聴いて1曲目から鳥肌モノでした。CDの歌声しか聴いたことが無かったので関西弁のMCは新鮮で和みました。そのギャップがまた良かったりしてね。

プログラムを1曲変更して、ダンスリーのアルバムの曲をアレンジ違いで演奏してくれたのは、少々マニアックですがうれしかったですね〜。YMOファンが再生ライブでライディーンのイントロを聴いたときの心境とでもいいましょうか(笑)。

コンサートのように、同時代に生き、数時間の同じ時間を同じ場所で共有できて、こうして会えたという経験はほんとに幸福なことだと思います。

ほんと最高の午後でした。また新潟公演来て欲しいな〜。

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銅版画の魅力


銅版画というのは銅の板の窪んだ部分にインクを詰めて、プレス機にかけて紙に転写する版画です。銅版画のインクが紙に載っている独特の雰囲気がとても良い画面を作り出します。

銅版画に使用する黒インクには、同じ黒でも何種類かあります。ノーマルな黒、赤っぽい黒、青っぽい黒、細かく精錬された黒…等々。

そんな銅版画の魅力を考えてみると、まずそのインクの深みですね。
インクの着き方というのが縦に着いているというか、しっかりと紙に食い込んでいて、油分があることによって独特の階調が生まれ、深みが出てくる点です。

それから額装にも惹かれます。45°のVマットに囲まれた画面とその余白はある種の静謐感と緊張感を生みます。

それに何より、一連のある種システマチックな制作工程というものにも惹かれるのでしょう。

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慰め

福永武彦の本に「藝術の慰め」というエッセイがある。氏の好きな画家についての云々を綴った名著で、僕の大好きな本である。
福永氏の著した小説には芸術家を主人公、もしくは登場人物としたものが多い。だからとは言い切れないが、この本の文体は創作を志す者の魂に深く響いてくる。
とはいっても評論的な内容ではなく、その絵、作家に対してまっすぐな気持ちで綴られた文章でとても読みやすい。
数枚の絵を観ながら画家の生きていた頃の街並みや時代、人間関係、精神状態などに想いを巡らせているうちにすっかりとその中に同化してしまう感じだ。

一枚の絵を前にした時、今からウン十年(あるいはウン百年)前に同じこの場所にこの絵の画家が居たのだ、そう考えるといっそう生々しさというか、人間臭さのような情感が目の前に現れてくる。
実物の絵を観た時の一番の醍醐味はそういった感情であり、画家が観ていた同じ色彩・形を共有していることであり、世界に一枚しかない絵がまさに今目の前にあるという現実感を噛み締めることであろう。

そんな感情をこの本は呼び覚ましてくれる、といったら大げさかもしれないが、ストレートに心に響いてくるものを文体から感じました。

残念ながら絶版の古い本ですが、もし機会があれば読んでみて下さい。

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クラシックCDレーベル・エラートに残されたモラーヌというテノール歌手の古い録音がある。クールな声で妙な甘ったるさが無く、フランス近代歌曲を数多く歌っている。
フォーレの曲も代表的なレパートリーであり、中でも有名な「月の光」は大好きでよく聴く。柔かでしっとりした音像は、古いモノラル録音であるが最新の立体感のある録音よりもはるかにリアルな空気感を作り出している。
この曲のドラマ性、空間、温度感といった独特の雰囲気はまさに音符と音符の間に存在しているといった感じ。

フォーレのCDを聴きながら19世紀末のフランスに浸っております。

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タイトル付け

絵にしろ音楽にしろタイトル付けは難しい。タイトルによって作品が限定されるし、物語性などの付加価値が付いてしまう場合もある。

現代美術などではよく「untitled」と見かける。「無題」である。観る人の想像力を束縛しない。自由な解釈でどうぞ、と言っている。「untitled」と付ければかっこいい感じもある。

名前は難しい。

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ルーツの画家

僕のルーツになっている画家は、フェルメール、シスレー、モネ、現代ではゲルハルト・リヒターなどいずれも「光」というキーワードが当てはまります。
もちろん好きな画家はこの他に沢山いますが 、影響を受けてるというのはこの4人が大きいでしょうか。

フェルメールは何枚か模写をしましたが、構図や色彩が非常によく計算されています。形に関してもかなりのデフォルメで納まり良くしていて、絵を構成している思考が勉強になります。

シスレーは初期の印象派の画家でかなり地味な存在ですが、その地味さが非常に好きでデリケートな色彩がなんとも言えません。

モネは言うまでも無く有名ですが、この人の絵は色彩的にかなり抽象的な要素が強いです。晩年視力が衰えていく過程で形体はどんどん抽象性を増していきますが、色彩の感覚は全く衰えずに鋭敏のままです。
晩年聴力が衰えていったフォーレのように、ある意味一つの頂点に達している感覚はすごいと思います。

リヒターは写真を用いたペインティングや原色を分厚くスキージで引いたペインティングなどが有名です。非常に現代的に洗練された映像的な画面である種匿名的な絵作りですがそれでもやはりゲルマン精神が表れていると思います。

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タイトルの「color eyes view」について

「眼が認識する色彩」という意。

最初は思いついたままの「色彩、眼、眺め・認識」というような単語の羅列にすぎなかった。
絵や写真を見たり音楽を聴いたりして自分の解釈を第三者に正当化してもらう必要は無い。 人はそれぞれ認識している感覚が違うしその差に良い・悪いなど無く、人それぞれが感じたまま好きな解釈でいい。一人一人の感動ほど気高いものは無いと思う。